瞳

馴染みの店であの人にあった。
あの人とは前に書いた以前、私が誘った人の事。

今でもちょっと魅かれるのは確かだけど、やっぱり何かちがう。
去年の夏、馴染みから他のバーに行き、その帰りにキスをした。
その日はもう遅かったので、翌日の休みに会おうという事にしたんだけど・・・結局、会ったらしまうわなぁって感じだったのね。
で、私が連絡しなかった為、うやむやに。

しばらくして、会った時には誘った店の帰りでエレベータで、それらしくなったんだけど、さすがに警戒しており、それでこっちも面倒になってそのままバイバイ。

以後、そのまま顔をあわせる程度。

でも昨日はちょっと違っていた。
どうやら、正式に離婚したそうだ。以前から別居状態だったとは聞いていたけど。
店に来たその人はちょっといつもより痛々しく、多分、私もしくは誰かに寄り添いたかったのだろう。
でも、弱弱しくも強がるその人を見て、私はこう思った。

私が今まで、見てきたこの人はこの結果にたどり着くためにもがいていた人だった。ゆえに答えが出た今、この人は私が相手にしちゃ、いけない人。
私のような欲情の権化みたいなのが、きっかけを与えと事が起きてはいけない人だと思った。
この人がそっちの面だけを求めるなら別だけど今、必要な事だと思っている事がそれとは違う事は瞳が語っていた。

そして私もそこに答えるつもりは、まったく無い。

ホントは人の事なんか考えず、欲望に走りたいくらいだけど、やっぱり相手とする人の事は考えてしまう。

どうせ事を起こしてもお互いに過去を一画でも上塗りできる相手はないと思っているから、私たちは微妙にひかれながらも繋がる事はないんでしょうね。

ああ・・・五年前のあの人、あの事、あの感覚を超える事はもう無いのかな。